完全商才 business.1～降り立った転生者～

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完全商才 business.1～降り立った転生者～

オリジナルＳＳ - 2021年01月31日 (日)

ここはよくある「トラックに轢かれた男が転生してきた」世界

ちょっと違うところがあるとすれば、異世界にもかかわらずほぼ現代の鏡写しのようなそっくりな世界であること。
そして、転生してきた男に与えられたいわゆる「転生特典」が、「完全商才」というものであること。

この「完全商才」とは文字通り、完全な商才を与えられるもので、どんな商売でも繁盛させることができるというものだ。

一言でいえば大金持ちになれる技能特典ではあるが、よくある「最強のステータス」とか「チート魔法」とか、「不死身」とか、その手の特典に比べれば微妙に思えるかもしれない。

しかしこの「完全商才」、その本質を知れば先に上げたありきたりな特典など比較にならないほどチートだということがわかる。

「こういう商売で儲けよう」と考え、行動に移せば能力の効果で自動的に理想通りの成功に至るわけだが、恐ろしいのは「どんな商売だろうと合法的に儲かる」という点だ。

極端なことを言えば、「人を突然殴る殴り屋」商売をしたとしよう。
まずはそれをしようと思った時点で即、世界が変わっていく。
具体的にはまず殴り屋が成立するように即日新法が提起され、即日決議される。
24時間以内に殴り屋は人を殴っても法的に許されるようになるのだ。

そして、人の意識も変わる。
突然殴られれば怒るのは当然だが、殴り屋に殴られれば喜び、感謝するようになるのだ。
しかも商売を成り立たせるために、「殴られて金を払う」ことを当然のことだと認識するようになる。

「完全商才」を持つ人間が商売として人を殴れば、殴っただけ儲かると言う世界になるのがこの力なのだ。

この本質を、転生者「大飯ブウ助」はしっかりと神に手ほどきを受け、新たな世界に降り立った。
質素な服と、１万円の現金だけを与えられて。

転生後の初期状態としては酷い状況だが、ブウ助には希望しかなかった。
まずは商売をしようと思う。それさえすれば、あとは２４時間以内に世の中の法律が変わるのを待つだけなのだから。

そしてブウ助は思った。

「……まずはおかし屋を始めるか」　と。

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