レンタルショップ AYATSUTA
オリジナルSS - 2022年04月23日 (土)
首都のある街の一角に、10階建てのマンションがある。
1Fと2Fがテナントになっている、よくある普通のマンションだ。
その2Fには、『レンタルショップAYATSUTA』という貸衣装屋がテナントとして入っている。
この看板が目印で、この1店舗だけの会社だが、マンションのオーナーが社長を務めているため、潰れることはない。
もっとも、「大抵の衣装はここで揃う」「コスプレの品揃えなら日本一」と評判で、AYATSTA単体で見ても経営状況は悪くない。
そんな貸衣装屋だが、一部の人間だけが知っている貸衣装屋とは別の裏の顔があった。
(このお店……よね?)
今日もまた、一人の客がAYATSUTAの裏の顔を目当てにやってきた。
閉店が近い時間のせいか、客は2~3人と少なかった。
客の女性がキョロキョロしていると、店員が声をかけていた。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「あ、はい。その……」
「ふ、フランス産のチャイナドレスって……ありますか?」
緊張しながら探し物を伝えると、店員は何かを察したように優しく微笑んだ。
「あぁ……なるほど。それでしたら奥にあるかもしれません。事務所の方にご案内しますので、少々お待ちいただけますか」
「わ、わかりましたっ」
(奥に案内されるってことは……ちゃんと伝わったってことでいいんだよね?)
店員は特異な注文をする女性客を店舗の裏にある事務所スペースへと案内した。
「狭いところで申し訳ございません。そこのソファにおかけください、今……担当を呼んできますので」
「は、はいっ」
(担当……ってことはやっぱり話が通じたってことね)
いかにもな事務所の中に、二人掛けのソファを向かい合わせた一応の応接スペースで待たされること5分。
一人の男がやってきた。
「オーナーの真寿田です」
「ますだ……さん」
真寿田と名乗る男は、オーナーらしく高級なスーツや時計をして身なりは整っていた。
しかしその容姿はお世辞にも整っているとは言えず、ニヤケた感じもあって生理的に受け付けないタイプの男だった。
(……右手に手袋をしてる?)
「お名前をお伺いしても?」
「あ、はい。沢井……沢井魅九です」
「沢井さん。ここへは紹介で来たのでしょうからわかっているとは思いますが、報酬をいただければ合法非合法問わずどんな依頼でも100%成功させますよ」
「100%……」
「はい。100%です」
「事実、今まで失敗はありません。もっとも、物理的に可能なことに限りますがね」
「難易度によって報酬が違うということですか?」
この質問の意図は、依頼には難易度相応の報酬が必要なのであれば、出来ない依頼には払えない報酬をふっかけ、依頼自体を取り下げさせることで100%の成功率を維持しているのではないかという勘繰りの意味合いが含まれていた。
「いやいや、報酬は基本的にどんな内容でも同じです」
「ま、男女での違いは設けていますが、少なくとも女性の依頼なら基本的にどんなに難しい依頼でも変わりません」
「ど、どんな内容か先に聞いても?」
「えぇもちろん。フフ…というか契約ですから、先に条件を知ってもらわなくては話になりませんよ」
「で、依頼を受ける報酬ですが……それは私があなたを抱くこと。つまりセックスです」
「……!」
(ほ、本当だったの……!?)
**** 数日前 ****
沢井魅九は学生時代の友人である女刑事、如月冬華に相談していた。
「魅九、あなたの強い思いはわかった。けど、公権力の警察が破壊活動の手助けはできないわ」
「そう……だよね」
魅九の相談は、それを実行すれば魅九が逮捕される可能性が高い内容だった。
本来、刑事にする話ではないことは魅九自身も理解していたが、他に相談できるほど信頼している相手はいない。
そんな魅九の心情を察してか、冬華はあることを教えてくれた。
「何でも屋……?」
「そう、何でも屋。そこならあなたの願いを叶えてくれるでしょうね」
「本当!?」
「本当よ。ただし、そこはハッキリ言って非合法よ」
「え?それって……」
「察しがいいわね。そう、大っぴらには言えないけど、警察もお世話になってるってわけ。本当になんでも頼めば叶えてくれるからね」
「一応言っておくけど、ヤクザじゃないわよ」
「ただし報酬はヤクザ以上に特殊よ。そのせいで私が個人的に依頼することはないの」
「報酬が特殊?」
「そう……求められる報酬は……―――」
*************
その時、魅九は報酬の内容がセックスであることを聞いていた。
知っていて尚、依頼をするためにこの店にやってきたのだ。
「報酬はセックス、それだけです。着手前に一回、成功報酬としてもう一回の合計2回セックスさせてもらいます。もちろんゴムは無しです」
「ま、大抵の方が躊躇いますよ。けど、多くの方が依頼されます」
「……」
「ここに来る方は、それなりの覚悟で来る人がほとんどなんでね」
「あなたもそのクチでしょう?」
「あ、あの!本当に、叶えてくれるんですよね?」
魅九の決意は固まっている。
だが、それでもセックスをするという行為にはどうしたって抵抗がある。
だから自分の背中を押すために、もう一度言葉で確約が欲しかったのだ。
「もちろんです。引き受けた仕事の成功率は100%ですから」
「100……」
にわかには信じ難いが、冬華の裏付けもある。
ここは信じてみようと、魅九は依頼内容を伝えた。
―――
「なるほど、父親の作った陶器が世に出る前に破壊して欲しい、と」
「取り戻すのではなく、破壊ですね?」
「そうです、壊してください。……粉々に」
魅九の依頼は陶器職人であった父の遺作が、父の師匠の手に渡ってしまい、父ではなく師匠名義で世に出されてしまう前に破壊して欲しいというものだった。
妻を早くに亡くし、男で一つで魅九を育てた父。
収入の安定しない陶器職人でありながら、大学まで出してくれた父。
そんな父の遺作が他人の名義で世に出され評価されるのは許せないと、そういうことだ。
「父は私にも思い出を込めた作品を残してくれたんです」
「それがあるから……」
「ふむ。依頼内容はわかりました。物の所在は不明でも大丈夫、破壊まできっちり完遂しますよ」
「わかりました……なら、お願いします」
魅九は依頼することを決めた。
自分ではどうやっても不可能なことを成し遂げてもらえるのなら、体を2回許すくらい耐えられる決意がある。
避妊しなくてもあとでピルを飲めばいいし、安全日でもある。
友達の紹介という希薄な裏付けしかないが、目の前の男からはやってくれると思わせる不思議な自信を感じた。
「ではさっそく一回目のセックスをしましょうか」
「は、はい……」
真寿田は店員に何か指示を出すと、3階へと案内した。
301号室の部屋に入るとそこはほとんどラブホテルの内装で、ここで依頼者が報酬としてのセックスを払ってきたのだろうことはすぐにわかった。
「ほほう……素晴らしい」
「これまでも美人の依頼者は何人もいましたが、あなたはその中でも特に美しい」
品定めして他の女と比較する。
あまりに失礼なことではあるが、これも報酬の内。
魅九は沈黙し、真寿田の望む通り抱かれるしかない。
「ではベッドで四つん這いになってください」
「……わかりました」
こうして沢井魅九は今日初めて会った男、真寿田とセックスをした。
「おぉー、これはなかなか……!」
「経験はあるんでしょうがそれを感じさせない良~い締まりだぁ」
「……ッ」
今日初めて会う男に抱かれるのも、目的の為なら耐えられた。
生挿入している真寿田は当然の如く中に射精したが、リスクを承知で取引を成立させた以上、魅九は黙ってそれを受け入れた。
2時間後、前払いのセックスが終わった魅九はシャワーを浴びていた。
(こんなにいっぱい中出しして……もしちゃんと仕事しなかったら殺してやる……!)
冷静になって少し怒りと疑念も湧いてきたが、それはシャワーから出てすぐに払拭されることとなった。
「お待たせしました。ターゲットの所在が判明しました」
「えっ!?も、もうわかったんですか?」
「フフフ、それが生業だからね」
「少しは信用してくれましたか?」
「え、えぇまぁ……」
(一体どうやって……)
手がかりゼロの状態からわずか2時間。
魅九にとっては信じられないことだったが、ともかく破壊さえしてもらえればそれでいい。
ふと、ここでもう一つ疑問が湧いた。
「あの……見つかったのはいいですけど、どうやって壊すんですか?」
「ご安心を。それができる人間がちゃんといるんでね」
「はい。既にここに呼んであります」
店員の女が扉を開けると、呼ばれていた人物が入ってきた。
「……」
「こ、この人が?」
破壊工作をする担当者。
それに対して軍人のようなイメージを抱いていた魅九にとって女性、それも若い人物が姿を見せたのは意外だった。
「そうですよ。座海ちゃん、自己紹介」
「了解しました」
「峯川座海(みねかわ ざうみ)と申します。某国の紛争地帯出身で、ゲリラ活動の中でスナイパーをしていました」
「今回、私が狙撃にてターゲットを破壊しますのでご安心ください」
「と、言うわけです。彼女をお貸ししますから、狙撃には立ち会うと良いでしょう」
「破壊する現場をご自身の目で確認した方が、スッキリするでしょうしね」
「わかりました。宜しくお願いします」
女スナイパーなど本当に存在するのか。
正直信じられない魅九だったが、ここまできたらなるようにしかならないと腹をくくり、座海についていくことにした。
決行は翌日で、迎えに来た座海と共に狙撃地点へと移動し、ライフルをセットする。
「ターゲットに間違いないか、ご確認を」
「は、はいっ」
スコープを覗いた魅九はその陶器が父親のものであることを確認した。
「間違いありません……あれは父のものです」
「了解しました。
それでは破壊します。危ないので、少し後ろに下がっていてください」
「わ、わかりました」
距離はおよそ600m。
この距離とターゲットの大きさなら確実に命中できると言う座海を信じ、魅九は固唾を飲んで待った。
―――バシュ!
割と大きな音で発射され、直後に座海はまたスコープを覗くように言った。
「凄い!本当に破壊してくれたんですね!」
粉々になり原型を留めていない陶器の姿に魅九は歓喜する。
「任務完了です。では急いでここを去りましょう。店までエスコートします」
「あ、はい。わかりました」
(そっか、この人……)
座海は依頼を果たす役割のほかに、依頼人が逃げないようにする監視役でもあったのだと魅九は気付いた。
成功報酬としてのセックス。
考えてもみれば、監視がいなければ依頼人が逃げることは少なくないはずだ。
(また抱かれるのは嫌だけど、でも、ちゃんと破壊してくれたし……)
魅九においては仮に一人だったとしても逃げなかっただろう。
それに無理難題を本当に完遂し、しかもこれほどの短期間でやってのけたことを見て、体を報酬とする異常さも納得できてしまうような気がしていた。
「沢井魅九さんをお連れしました」
「ご苦労様。下がっていいよ」
「ハッ!」
座海が退室し、部屋にはオーナーの真寿田と魅九だけとなった。
「さて、結果は報告受けていますが、ご満足いただけましたか?」
「……はい。破壊された状態を、この目で確認しました」
「粉々になっていて原型がわからないくらいで……ありがとうございました」
「それは良かった」
「さて、こちらの仕事は終わりましたので、報酬をいただいてもよろしいですか」
「……わかりました」
魅九は事後報酬のセックスを受け入れた。
二度目のセックスだからといって、嫌な気持ちがなくなるわけではない。
だが、無理難題と思われた依頼を、相手はしっかりと完遂してくれた。
真面目な彼女は、しっかりと約束を守ったのだ。
「これで支払いは済ましたね」
「えぇ。しっかりと堪能させていただきました」
「こんな商売をしていてなんですが、あなたは過去のお客様のなかでも非常に魅力的な女性です」
「良かったら、最後に握手させてもらえませんか」
「はぁ。握手くらいでしたら」
真寿田はここで初めて、右手の手袋を外した。
見たところ普通の手で、魅九からすればなぜセックスの時も外さなかったのだろうと不思議に思う。
だが、その理由は握手してわかることとなった。
「ああっ……!?」
素手で握手した瞬間だった。
真寿田から魅九に電流のような刺激が伝わり、彼女の脳を犯したのだ。
「ちょうど弁護士が欲しかったんですよ」
「あなたは若くて綺麗だし、「住人」として合格だ」
真寿田の右手。
それは触れた人間を自らに忠実な人形に変えてしまう力を持っていた。
触ると強制的に発動してしまう力なので、普段は手袋をしていたのだ。
ともあれ、沢井魅九は右手で触れられてしまった。
それはすなわち、彼女が真寿田に支配された人形になったことを意味している。
――――2週間後
『レンタルショップAYATSUTA』が入っているマンションに、新たな入居人がいた。
その人物の名前は沢井魅九。
新たな住人としてマンション306号室に入居した彼女は、これから表向きは女弁護士として今まで通りの生活をつづけながら、裏では真寿田の経営するAYATSUTAの人員として働くのだ。
そして当然のことながら、真寿田の好きな時にその体を抱かれる慰み者としても……。
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