真剣で私に相談しなさい!忍足あずみ編その4
真剣で私に恋しなさい! - 2019年04月13日 (土)
忍足あずみが伊達操助に告白してから数日後。
あずみに時間を作って欲しいと言われた英雄は、多忙を極めるなかにもかかわらず1時間という長い時間を確保してくれた。
「英雄様、お呼び立てしてすいません」
「あずみに折り入って話したいことがあると言われたからな」
「我でよければ時間くらいいつでも作る」
「ありがとうございます」
時間をつくってもらい、あずみは本心から英雄に感謝している。
それは英雄にもわかるが、いつもと違う雰囲気も感じ取れた。
きっと重大なことなのだろう。
そう思い、あずみが口を開くまで待つ。
「実は……」
「うむ」
「……実は、私の結婚式ならぬ隷属式を英雄様に見ていただきたくて、直接お誘いしたかったんです」
「結婚式ならぬれいぞくしき……?」
「はい。奴隷の隷に、属性の属、それに結婚式の式で隷属式です」
「私が英雄様への想いを全て断ち切って、伊達操助様に尽くす女になる儀式……隷属式に是非御立合いいただけないでしょうか」
英雄は珍しく驚いた表情を見せ、しばらく黙った。
少し考えこむ様子もみせたが、最後には笑顔で返事をした。
「……そうか。あいわかった!」
「あずみの頼みだ。その隷属式とやら、喜んで立ち合おう」
「ほ、本当ですか!?あ、ありがとうございます!!」
頭が地面につくのではないかというくらい深々と頭を下げるあずみ。
そこまでしなくていいと英雄が肩に手をのせると、あずみ嬉し泣きしている顔をあげた。
「ぐすっ……本当は英雄様が好きだったんです。でも、今は伊達操助様に隷属することを決めた身……」
「今後一切の誤解が生まれないよう、決別の意味を込めた隷属式を英雄様に見て頂けるなんて……夢のようです!!」
「なんと……あずみ、お前は我を想っていたのか……応えてやれなくてすまない」
隷属式より、自分を好きだったと言うことのほうに英雄は驚いていた。
専属従者の気持ちにも気付けなかった器の小さい自分に呆れるようなため息をつくが、どこか安堵しているようでもある。
「だが……我があずみの想いに気付かぬまま隷属式をするまでに至ったのは幸いかもしれぬ」
「ど、どういうことですか?」
「我は……もはや男としては不能なのだ」
「えっ……?」
英雄は自分の男性機能が既に正常に働かないことを告白した。
既に全く勃起せず、射精することも無いと言う。
そうなった理由も詳細に語った。
「お前も知っているだろうが、我は一度一子殿に告白し、振られた経緯がある」
「……はい」
「実はあれにはその後がある。我が振られてから少しして、一子殿から付き合って欲しいと逆に告白を受けたのだ」
「ええ!?そうだったんですか!?」
「うむ。あれは我にとって人生最良の日だった」
「恋い焦がれた一子殿と付き合えることになったのだ、我も喜んだ。しかし……」
幸せそうに回想していた英雄は一転して、暗い表情になった。
「付き合いはじめ、何度か逢瀬を重ねたある日……我は一子殿と一夜を共にする機会を得た」
「最高級のスイートを貸切り望んだあの夜……一子殿を抱くことになったあの時……」
「バスタオルを巻いているだけの美しい肢体に目を奪われた。そして気付いた」
「一子殿の腹が膨らんでいることに」
なんと英雄は、脱童貞というところで一子が既に別の男との子を妊娠していると言う事実を知ってしまったのだ。
その瞬間、自分の積み上げてきた自信や男としてのプライド、様々な物が砕け、音をたてて崩れ去ったらしい。
「一子殿は誰の子か教えてくれなかった。しかし確実に我のではない子供を身ごもっている姿を見て、我は絶望し、その時のショックで不能になってしまったのだ……」
「崩れ落ち膝をつき、涙を流して放心する我を一子殿は心底軽蔑したような目で見ていた」
「九鬼英雄とはこんなにも小さく、愚かで、矮小な人間なのだと落胆し、軽蔑した目……言葉にせずとも我にはわかった」
「そしてそんな我に一子殿は言った。傷ついた……と」
「こうも言った。一生償ってもらう……と」
この話を聞いて、あずみはどう反応していいのかまったくわからなかった。
慰めの言葉をかければよいのか、それとも励ましか。
「そ、そうだったんですか……」
出てきた言葉は、あまりにも陳腐だった。
しかし、それ以上の言葉はあずみの頭には浮かんでこなかった。
「経緯はどうあれ、我は一子殿を受け入れてやることができなかった。それで彼女を傷つけたのには違いない」
「だから我はその場で誓ったのだ。一生をかけて一子殿に償うと」
「し、しかしそれではあまりに……!」
「言うな。我が一度決めたこと、翻すつもりはない」
「ですが子供が……」
「わかっている。時期に一子殿の腹は大きくなり、人目を誤魔化すこともできなくなるであろう」
「そうなったら、我は一子殿と籍を入れ、生まれた子も我の子として育てるつもりだ」
「……!」
予想の斜め上の決意を聞かされ、あずみは絶句した。
気付いたら自分の隷属式の話どころではなく、英雄の話に聞き入ってしまい確保していた1時間が過ぎてしまう。
一応、最後に隷属式の日取りだけを伝えると、英雄は快諾し仕事に戻った。
つづく
真剣で私に相談しなさい!シリーズ 時系列順
1.黛由紀江編
2.小島梅子編
3.川神百代編
4.小島梅子編その2
5.川神一子編
6.椎名京編
7.川神一子編その2
8.黛由紀江編その2
9.黛由紀江編その3
10.椎名京編その2
11.黛由紀江編その4
12.川神一子編その3
13.クリスティアーネ・フリードリヒ編
14.小島梅子編その3
15.椎名京編その3
16.椎名京編その4
17.椎名京編その5
18.椎名京編その6
19.小笠原千花編
20.甘粕真与編
21.忍足あずみ編
22.忍足あずみ編その2
23.忍足あずみ編その3
24.椎名京編その7
あずみに時間を作って欲しいと言われた英雄は、多忙を極めるなかにもかかわらず1時間という長い時間を確保してくれた。
「英雄様、お呼び立てしてすいません」
「あずみに折り入って話したいことがあると言われたからな」
「我でよければ時間くらいいつでも作る」
「ありがとうございます」
時間をつくってもらい、あずみは本心から英雄に感謝している。
それは英雄にもわかるが、いつもと違う雰囲気も感じ取れた。
きっと重大なことなのだろう。
そう思い、あずみが口を開くまで待つ。
「実は……」
「うむ」
「……実は、私の結婚式ならぬ隷属式を英雄様に見ていただきたくて、直接お誘いしたかったんです」
「結婚式ならぬれいぞくしき……?」
「はい。奴隷の隷に、属性の属、それに結婚式の式で隷属式です」
「私が英雄様への想いを全て断ち切って、伊達操助様に尽くす女になる儀式……隷属式に是非御立合いいただけないでしょうか」
英雄は珍しく驚いた表情を見せ、しばらく黙った。
少し考えこむ様子もみせたが、最後には笑顔で返事をした。
「……そうか。あいわかった!」
「あずみの頼みだ。その隷属式とやら、喜んで立ち合おう」
「ほ、本当ですか!?あ、ありがとうございます!!」
頭が地面につくのではないかというくらい深々と頭を下げるあずみ。
そこまでしなくていいと英雄が肩に手をのせると、あずみ嬉し泣きしている顔をあげた。
「ぐすっ……本当は英雄様が好きだったんです。でも、今は伊達操助様に隷属することを決めた身……」
「今後一切の誤解が生まれないよう、決別の意味を込めた隷属式を英雄様に見て頂けるなんて……夢のようです!!」
「なんと……あずみ、お前は我を想っていたのか……応えてやれなくてすまない」
隷属式より、自分を好きだったと言うことのほうに英雄は驚いていた。
専属従者の気持ちにも気付けなかった器の小さい自分に呆れるようなため息をつくが、どこか安堵しているようでもある。
「だが……我があずみの想いに気付かぬまま隷属式をするまでに至ったのは幸いかもしれぬ」
「ど、どういうことですか?」
「我は……もはや男としては不能なのだ」
「えっ……?」
英雄は自分の男性機能が既に正常に働かないことを告白した。
既に全く勃起せず、射精することも無いと言う。
そうなった理由も詳細に語った。
「お前も知っているだろうが、我は一度一子殿に告白し、振られた経緯がある」
「……はい」
「実はあれにはその後がある。我が振られてから少しして、一子殿から付き合って欲しいと逆に告白を受けたのだ」
「ええ!?そうだったんですか!?」
「うむ。あれは我にとって人生最良の日だった」
「恋い焦がれた一子殿と付き合えることになったのだ、我も喜んだ。しかし……」
幸せそうに回想していた英雄は一転して、暗い表情になった。
「付き合いはじめ、何度か逢瀬を重ねたある日……我は一子殿と一夜を共にする機会を得た」
「最高級のスイートを貸切り望んだあの夜……一子殿を抱くことになったあの時……」
「バスタオルを巻いているだけの美しい肢体に目を奪われた。そして気付いた」
「一子殿の腹が膨らんでいることに」
なんと英雄は、脱童貞というところで一子が既に別の男との子を妊娠していると言う事実を知ってしまったのだ。
その瞬間、自分の積み上げてきた自信や男としてのプライド、様々な物が砕け、音をたてて崩れ去ったらしい。
「一子殿は誰の子か教えてくれなかった。しかし確実に我のではない子供を身ごもっている姿を見て、我は絶望し、その時のショックで不能になってしまったのだ……」
「崩れ落ち膝をつき、涙を流して放心する我を一子殿は心底軽蔑したような目で見ていた」
「九鬼英雄とはこんなにも小さく、愚かで、矮小な人間なのだと落胆し、軽蔑した目……言葉にせずとも我にはわかった」
「そしてそんな我に一子殿は言った。傷ついた……と」
「こうも言った。一生償ってもらう……と」
この話を聞いて、あずみはどう反応していいのかまったくわからなかった。
慰めの言葉をかければよいのか、それとも励ましか。
「そ、そうだったんですか……」
出てきた言葉は、あまりにも陳腐だった。
しかし、それ以上の言葉はあずみの頭には浮かんでこなかった。
「経緯はどうあれ、我は一子殿を受け入れてやることができなかった。それで彼女を傷つけたのには違いない」
「だから我はその場で誓ったのだ。一生をかけて一子殿に償うと」
「し、しかしそれではあまりに……!」
「言うな。我が一度決めたこと、翻すつもりはない」
「ですが子供が……」
「わかっている。時期に一子殿の腹は大きくなり、人目を誤魔化すこともできなくなるであろう」
「そうなったら、我は一子殿と籍を入れ、生まれた子も我の子として育てるつもりだ」
「……!」
予想の斜め上の決意を聞かされ、あずみは絶句した。
気付いたら自分の隷属式の話どころではなく、英雄の話に聞き入ってしまい確保していた1時間が過ぎてしまう。
一応、最後に隷属式の日取りだけを伝えると、英雄は快諾し仕事に戻った。
つづく
真剣で私に相談しなさい!シリーズ 時系列順
1.黛由紀江編
2.小島梅子編
3.川神百代編
4.小島梅子編その2
5.川神一子編
6.椎名京編
7.川神一子編その2
8.黛由紀江編その2
9.黛由紀江編その3
10.椎名京編その2
11.黛由紀江編その4
12.川神一子編その3
13.クリスティアーネ・フリードリヒ編
14.小島梅子編その3
15.椎名京編その3
16.椎名京編その4
17.椎名京編その5
18.椎名京編その6
19.小笠原千花編
20.甘粕真与編
21.忍足あずみ編
22.忍足あずみ編その2
23.忍足あずみ編その3
24.椎名京編その7
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