「気を引き締めなさい」

「懸賞金２５００万ベリーとはいえ、麦わら海賊団から二人も引き抜くほどの海賊よ」

「ここから出すわけにはいかないわ」

「「「ハッ！」」」

海軍本部大佐、黒檻のヒナ。
彼女が待ち構えていたのは、麦わら海賊団からナミとニコ・ロビンの二名を引き抜いたと噂される海賊団だった。

「ムハ！まさかこんな大勢で待ち構えられているとは！」

「来たわね。適当海賊団船長、スロッピー・バウトア」

「ここから先は通さない」

「通さない～？本当にかぁ？」

「……え？」

「ここを我々が通っても誰も気にしない。ここの守りはそれくらいユル～い、そうだろう？」

「う……そ、そうね。そうだわ。ここの守りはユルいから、通っていいわ。ヒナ、あんまり頑張らない」

発動がわからないタイプのユルユルの実。
その効果範囲は半径１mから数キロと自在で、待ち構えていたヒナたちはその能力の影響で素通りさせてしまうこととなった。

「ところで、お前ウチの海賊団に入ってくれないか」

「は？何を言って……」

「別に海軍なんていつやめてもいいだろ～？だったら、ウチの海賊団に入って、テキトーにセックスしながらテキトーに暴れまくろうぜ」

「しかたないわね。ヒナ、海軍やめてあなたの海賊団に入るわ」

「ムハハ！それでこそ黒檻のヒナ！責任感がユルい！」

ユルユルの実で正義感・責任感・倫理観・価値観・貞操感。
あらゆる感覚がユルくなってしまったヒナは、適当海賊団の船員になってしまった。

それ以降も各地に出没しては、女海賊や女海兵を中心に力を増した適当海賊団。
気付けば四皇にも匹敵する戦力になっていたが、ただの一度も戦闘をすることはなかった。

戦おうとしたものは皆、戦意や敵意をユルくされ、結果戦うことがなかったからだ。

戦いを挑めない海賊団として猛威を振るった適当海賊団は、適当に世界を航海し、適当に世界を壊していったのだった。

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