辻堂さんの宗教ロードReligion1「カツアゲ相手は教祖さま!?」
辻堂さんの純愛ロード - 2018年12月28日 (金)
三大天と呼ばれるヤンキー達が湘南を賑わせている不良戦国時代の裏で、何のとりえもないキモオタの人生が一変する出来事が起きていた。
男の名前は龍咲大念。
彼は行きつけの古本屋の棚の中から、本を抜き取る時に別の本が引っかかり床に落としてしまう。
『栄枯盛衰』
と書かれた売り物といえないほどにボロボロの本。
なぜだか惹かれた大念は、その本を買うことにした。
大念「これが1188円……高かったな」
失敗したかもと思いながらも帰宅後その本を開いてみる。
すると本には古代の宗教について書いてあった。
大念「入信水……ねぇ」
古代の人間は特殊な水を生成し、それを飲ませることで信者を作り出すことで宗教を形作り、支配していたと書かれていた。
入信水と呼ばれるそれは、飲めばたちどころに人の心を掴み、信者にしてしまったという。
あまりにも胡散臭い話だ。そんな物が本当にあれば世界征服できてしまうが、現実にはそんなことにはなっていない。
しかしその入信水をもってしても先人たちが宗教を維持できない理由が本にはちゃんと記載されていた。
そもそも入信水は生成するのに必要な材料が現代でも入手が難しいもので、当然古代では今よりもさらに生産が難しかった。
大量生産はおろか教祖が生きている間に規模を拡大することができず、教祖が死ねば自ずとその宗教は解散することになるため滅びてしまったらしい。
様々な種類の入信水が過去には存在したが、その生成の手順や材料を教祖は秘匿する傾向にあったため、誰にも伝わらないまま消滅するケースがほとんどだったことも大きい。
大念「一応だけど辻褄はあってるんだな」
胡散臭いという評価から半信半疑くらいにまではなった大念だが、それでも疑問は大きかった。
過去に入信水が実在したとして、この本に載っている材料や生成手段が本物かはわからない。
生成に使う器具は現代なら容易に揃えられるものばかりだったが、試作するには材料の内容がそれを躊躇わせた。
―― 生成に必要な物 ――
1、真水
2、ヤドリギの種
3、雪隷茸
4、精液
大念「最後の二つがなぁ……特に四つ目。こんなのが入った水を人に飲ませるんだろ……無理だろ……」
大念「大体、雪隷茸ってのも聞いたことないし」
大念「……げっ。通販で2万!?松茸だってもっと安いぞ」
大念「はぁ……2万かぁ……」
成功するかもわからないから博打のようなものに大金をつぎ込むのは気が引けた。
だが、心のどこかでくすぶるものもある。
飲ませた相手を支配できる
今まで目立つことも誰かに優位に立ったと言うこともなかった大念にとって、それはあまりにも魅力的なことだったのだ。
大念「2万……か」
―――2週間後
大念「……作ってしまった」
自分でも何を血迷ったのかとさえ思ったが、作らずにはいられなかった。
手順も材料も本に書いてある通りに行い出来た完成品は、無色透明で匂いも近くで嗅がないとわからない程度の液体で、何も知らずに見たら水にしか見えない。
これがちゃんと効果を発揮する物に出来ているとすれば、自分が作ったそれを自分で飲んだらどうなるか予想もつかないので味を確かめることはできなかった。
500ml程度の量だったので、家にあったミネラルウォーター「めろはす」のボトルに詰めてバックにしまう。
大念(だ、誰かに飲ませればいいのか……)
家にいるとそわそわするのでとりあえず外に出てみたものの、入信水を飲ませる相手がパッとつかるわけもない。
冷静に考えれば実際に効果があるかもわからないし、知らない人から水を渡されて素直に馬鹿はいない。
大念(友達に飲ませるのもなぁ……)
オタク友達なら差し入れて飲んでもらえるとも思ったが、やはり飲ませるなら可愛い女がいい。
大念(無理だよなぁ……)
ドンッ
大念「うわっ!?」
ヤンキー「あっ!?」
入信水が入っためろはすのボトルを手に持ちながらふらふら歩いていると、油断からか不幸にも黒学ランの不良にぶつかってしまう。
不良の持っていたコンビニ袋を路面に落させてしまった大念に対し、不良が取った行動とは……。
ヤンキー「おらぁ!」
大念「ぎゃっ!」
大念は殴られ、少ない所持金まで奪われてしまった。
気が済んだ不良は路面に落としたガムとカップラーメンにおにぎり、そしてめろはすやクリスタノレ・カイザーなどの飲み物を拾ってその場を去った。
大念「いてて……あーくそ……最悪だよ……」
なんとか起き上がり、殴られた拍子に手から離れてしまっためろはすのボトルを拾いあげる。
すると……
大念「こ、これじゃない!?俺の作ったのは……」
大念にはそのめろはすが自分の作った入信水じゃないことが一瞬でわかった。
普通のペットボトル飲料は、上の方に水が入っていない部分があるが、大念は隙間が無いほど満タンに詰めていたのでこれが違うものだとすぐにわかった。
大念(もしかしてさっきのヤンキーが……間違って持ってったのか!?)
大念「……」
大念「…………」
大念「………………ヤバ!」
大念「ど、どどどどうしよう!?」
作った使ったお金も戻らないし、最悪の気持ちだった。
もし誰かがあれをめろはすと間違って飲んだらどんなってしまうのか。
相手が不良なだけに何か起きたらどうしようと強い不安に駆られてしまう。
大念(でも何も起こらない可能性の方が高いのか……な?)
必死に今後のことを都合よく考えてみる。
入信水には効果は無いとか、効果があっても自分の事をしらない人間が飲んだなら信者になりようもないとか、色々都合よく考えて何も起きないと自分に言い聞かせる。
大念「はぁ……」
とにかく疲れてしまった大念は、まっすぐに帰宅した。
一方、大念を殴り間違いとはいえめろはすを奪っていった不良はヤンキーの巣窟にいた。
そこは湘南三大天「血まみれ恋奈」率いる江乃死魔の隠れ家。
モブヤンキーに過ぎない彼は買い出しにパシられていたというわけだ。
『恋奈さまー、めろはすってどこっすか?』
『袋に入ってるわよ』
『了解っす!お、これこれ♪めろはす最近ハマってるんすよー』
『ごくごく……ぷはぁっ!』
『あれ?いつもと味が違うっすね……う?……あ……あぁ……!?』
―――数日後。
殴られた跡が消えた大念は久しぶりに登校し、夕方になって寄り道をひながら帰宅していた。。
入信水のことはすっかり諦め、普通にオタクとして生活していけばそれで満足と考えるようになっていた。
そんな大念が一人で歩いている姿を、ある人物が目撃していた。
梓「あー、見るからにチョロそう。今日の獲物はあれで決まり♪」
江乃死魔幹部の一人、乾梓にターゲットにされてしまったのだ。
一度カツアゲの対象にされてしまったが最後、仮に逃げたとしても江乃死魔最速を誇る彼女から逃れる術はなかっただろう。
梓「ボコボコにされたくなかったら財布を出すんっすよ」
大念「ひい!?」
ケンカなんかしたことの無い大念は、女相手でも逆らうことが出来ず無様に財布を差し出してしまう。
梓「素直でよろしい
」
財布を奪い満足そうな梓だが、相手の顔を良く見ると違和感を感じる。
梓「……ん?」
梓(なんすかこの気持ち……凄い罪悪感あるんすけど……)
梓(なんだろう、とっちゃダメな気が……)
大念「も、もう行っていいですかっ」
梓「え?あぁ、まぁいいけど……名前は?」
大念「な、名前!?そ、それは……」
またカモにされることを恐れる大念が名前を言うのを渋るのも当然だった。
梓「言えっつってんだろーが!名前だよ名前!」
大念「すすすすいません!りゅ、龍咲大念です」
梓「龍咲大念……?」
それを聞いた梓は数秒固まってから驚愕の声を上げるする。
梓「ええええええ!?」
梓「あ、あなたが!?」
大念「え?あ、はい」
梓「ごめんなさいっ!」
大念「ちょ、ええ!?」
大念の名前を聞いた途端、乾梓は奪った財布を返し、深々と頭を下げて謝罪した。
急に何度も何度も頭を下げられ、大念もわけがわからない。
梓「本当にすいません!まさか教祖様だなんて思ってなくて!」
梓「う、うえええん!ゆ、許されないっすよね?死んで詫びます!」
大念「な、何で泣くの!?って、ていうか教祖様!?」
大念(え?もしかしてこの子があれを飲んで、し、信者になったっていうのか?)
梓の反応に戸惑うしかなかったが、この反応と彼女の口から出てきた『教祖様』というワード。
入信水を飲んだのでなければ説明できない状況だった。
大念「あの……か、確認なんだけど……」
梓「死ねばいいんすね!?もちろん今すぐにでも死ぬっす!どう死ねばいいですか!?」
大念「そうじゃなくて、その……き、君はええと……お、俺の信者……なの?」
梓「破門ってことっすか!?」
大念「違う違う、そうじゃなくて……とりあえず破門でもないし償うとかもいいから話聞いてくれる?」
梓「こんな大罪を犯した私を許してくれるんすか!?」
大念「ゆ、許す。許すから」
梓「……!」
許すと言われた梓は一瞬硬直し、そのすぐ後に体を震えさせて俯いた。
梓「きょ……」
大念「きょ?」
梓「教祖さまあああああ!!」
大念「うへ!?」
梓「うえええええんっ」
突然叫んだかと思うと、胸に飛び込んできて号泣する梓に大念もパニックだった。
大念「ちょっ!?い、いったい」
大念(なんだこの状況!?って言うか今このひとやっぱり教祖様って言ったよな!?)
大念(っていうか胸があたって……!ああもう何が何だか……!!)
必死に今の状況を理解しようとするが、巨乳のおっぱいの感触で理性が吹き飛びそうになる。
彼女が泣き止み落ち着いて話ができるまではかなり時間がかかった。
*辻堂さんの宗教ロード*
Religion1「カツアゲ相手は教祖さま!?」
彼女の名前は乾梓。
陸上の名門由井浜の生徒で、あの江乃死魔で幹部をやっているガチガチの不良。
数日前から龍咲大念の信者……つまり俺の信者になったという認識らしく、とにかくめちゃめちゃ信仰心が強いらしい。
大念「初めて会ったわけだけど、俺の信者になんてなんでなったの……?」
梓「なんか突然ビビッときたんすよ。龍咲大念様の教えの元に生きていくんだーって頭が埋め尽くされて」
大念「さ、様……ち、ちなみに俺のこと見てどう思う?」
梓「う~ん、教祖様は見た目は絶妙なラインでキモいっすけど、それはそれで味があっていい感じじゃないっすかね。なんていっても神っすから」
信者と簡単に言うが、なにかルールはあるのかと聞くと、特にないらしい。
その理由も大念がルールを決めていないかららしく、信者は教祖の言う事を信じその通りにするだけなのだという。
大念「じゃあ例えば、その……俺に絶対服従するのが信者の決まりって言ったら従うの?」
梓「もちろんっす!っていうかそれは言われなくても既にそうっすよ?」
大念「で、でもさ。例えば俺が死ねとか言っても死ねないでしょ?」
梓「え?死ねますけど」
大念「はい?いやいやそれはさすがに嘘でしょ」
あまりに簡単に梓が答えるので、これは冗談かと思ったがどうやらそうではないらしい。
梓「大マジっすよ。教祖様が死ねと命じるんなら、自分の命なんていつでも捨てれるっす」
梓「あずはガチの信者なんでトーゼンですよ」
大念(ほんとかよ……)
もうちょっと思いつめた感じで言われたのならともかく、ここまでポップに言われてすぐに信じられるほど大念も単純ではない。
しかし本心かどうか確かめようにもその方法も思い浮かばない。
いや思い浮かんではいるのだが、それを言うのは気が引けた。
大念「ま、まぁそれは極端だけどさ……その、証拠がないじゃない」
梓「なんでも言う事を聞くって証明すればいいってことっすね!だったらなんでも言ってください」
大念「な、なんでも……?」
梓「はい!なんでも♪」
大念「へ、へんなこと言っても怒らない……?」
梓「やだなー、あずが怒るわけないじゃないっすかー」
ここまで念を押したので、大念は緊張しながらも自分の考えを言ってみることにした。
大念「え~とその、例えばじゃあ……お、俺とエッチなこと……なんて……で、できないよね?」
梓「もちろんいいっすよ」
大念「ま、マジ?」
梓「マジもマジっすよ。教祖様のお誘いを信者の自分が断るわけないじゃないっすか」
大念(ま、マジかよ……)
初対面の男にヤらせろと言われて、笑顔でOKする。そんなこと普通じゃありえない。
嘘をついているようには見えなかったし、これだけ見た目の整った女の子と初体験できるかもしれない。
そう思ったら大念は頭がヤることでいっぱいになってしまった。
梓「ここから少し歩いたところにラブホあるっすから、そこ行きましょ
」
大念「う、うん……!」
つづく
男の名前は龍咲大念。
彼は行きつけの古本屋の棚の中から、本を抜き取る時に別の本が引っかかり床に落としてしまう。
『栄枯盛衰』
と書かれた売り物といえないほどにボロボロの本。
なぜだか惹かれた大念は、その本を買うことにした。
大念「これが1188円……高かったな」
失敗したかもと思いながらも帰宅後その本を開いてみる。
すると本には古代の宗教について書いてあった。
大念「入信水……ねぇ」
古代の人間は特殊な水を生成し、それを飲ませることで信者を作り出すことで宗教を形作り、支配していたと書かれていた。
入信水と呼ばれるそれは、飲めばたちどころに人の心を掴み、信者にしてしまったという。
あまりにも胡散臭い話だ。そんな物が本当にあれば世界征服できてしまうが、現実にはそんなことにはなっていない。
しかしその入信水をもってしても先人たちが宗教を維持できない理由が本にはちゃんと記載されていた。
そもそも入信水は生成するのに必要な材料が現代でも入手が難しいもので、当然古代では今よりもさらに生産が難しかった。
大量生産はおろか教祖が生きている間に規模を拡大することができず、教祖が死ねば自ずとその宗教は解散することになるため滅びてしまったらしい。
様々な種類の入信水が過去には存在したが、その生成の手順や材料を教祖は秘匿する傾向にあったため、誰にも伝わらないまま消滅するケースがほとんどだったことも大きい。
大念「一応だけど辻褄はあってるんだな」
胡散臭いという評価から半信半疑くらいにまではなった大念だが、それでも疑問は大きかった。
過去に入信水が実在したとして、この本に載っている材料や生成手段が本物かはわからない。
生成に使う器具は現代なら容易に揃えられるものばかりだったが、試作するには材料の内容がそれを躊躇わせた。
―― 生成に必要な物 ――
1、真水
2、ヤドリギの種
3、雪隷茸
4、精液
大念「最後の二つがなぁ……特に四つ目。こんなのが入った水を人に飲ませるんだろ……無理だろ……」
大念「大体、雪隷茸ってのも聞いたことないし」
大念「……げっ。通販で2万!?松茸だってもっと安いぞ」
大念「はぁ……2万かぁ……」
成功するかもわからないから博打のようなものに大金をつぎ込むのは気が引けた。
だが、心のどこかでくすぶるものもある。
飲ませた相手を支配できる
今まで目立つことも誰かに優位に立ったと言うこともなかった大念にとって、それはあまりにも魅力的なことだったのだ。
大念「2万……か」
―――2週間後
大念「……作ってしまった」
自分でも何を血迷ったのかとさえ思ったが、作らずにはいられなかった。
手順も材料も本に書いてある通りに行い出来た完成品は、無色透明で匂いも近くで嗅がないとわからない程度の液体で、何も知らずに見たら水にしか見えない。
これがちゃんと効果を発揮する物に出来ているとすれば、自分が作ったそれを自分で飲んだらどうなるか予想もつかないので味を確かめることはできなかった。
500ml程度の量だったので、家にあったミネラルウォーター「めろはす」のボトルに詰めてバックにしまう。
大念(だ、誰かに飲ませればいいのか……)
家にいるとそわそわするのでとりあえず外に出てみたものの、入信水を飲ませる相手がパッとつかるわけもない。
冷静に考えれば実際に効果があるかもわからないし、知らない人から水を渡されて素直に馬鹿はいない。
大念(友達に飲ませるのもなぁ……)
オタク友達なら差し入れて飲んでもらえるとも思ったが、やはり飲ませるなら可愛い女がいい。
大念(無理だよなぁ……)
ドンッ
大念「うわっ!?」
ヤンキー「あっ!?」
入信水が入っためろはすのボトルを手に持ちながらふらふら歩いていると、油断からか不幸にも黒学ランの不良にぶつかってしまう。
不良の持っていたコンビニ袋を路面に落させてしまった大念に対し、不良が取った行動とは……。
ヤンキー「おらぁ!」
大念「ぎゃっ!」
大念は殴られ、少ない所持金まで奪われてしまった。
気が済んだ不良は路面に落としたガムとカップラーメンにおにぎり、そしてめろはすやクリスタノレ・カイザーなどの飲み物を拾ってその場を去った。
大念「いてて……あーくそ……最悪だよ……」
なんとか起き上がり、殴られた拍子に手から離れてしまっためろはすのボトルを拾いあげる。
すると……
大念「こ、これじゃない!?俺の作ったのは……」
大念にはそのめろはすが自分の作った入信水じゃないことが一瞬でわかった。
普通のペットボトル飲料は、上の方に水が入っていない部分があるが、大念は隙間が無いほど満タンに詰めていたのでこれが違うものだとすぐにわかった。
大念(もしかしてさっきのヤンキーが……間違って持ってったのか!?)
大念「……」
大念「…………」
大念「………………ヤバ!」
大念「ど、どどどどうしよう!?」
作った使ったお金も戻らないし、最悪の気持ちだった。
もし誰かがあれをめろはすと間違って飲んだらどんなってしまうのか。
相手が不良なだけに何か起きたらどうしようと強い不安に駆られてしまう。
大念(でも何も起こらない可能性の方が高いのか……な?)
必死に今後のことを都合よく考えてみる。
入信水には効果は無いとか、効果があっても自分の事をしらない人間が飲んだなら信者になりようもないとか、色々都合よく考えて何も起きないと自分に言い聞かせる。
大念「はぁ……」
とにかく疲れてしまった大念は、まっすぐに帰宅した。
一方、大念を殴り間違いとはいえめろはすを奪っていった不良はヤンキーの巣窟にいた。
そこは湘南三大天「血まみれ恋奈」率いる江乃死魔の隠れ家。
モブヤンキーに過ぎない彼は買い出しにパシられていたというわけだ。
『恋奈さまー、めろはすってどこっすか?』
『袋に入ってるわよ』
『了解っす!お、これこれ♪めろはす最近ハマってるんすよー』
『ごくごく……ぷはぁっ!』
『あれ?いつもと味が違うっすね……う?……あ……あぁ……!?』
―――数日後。
殴られた跡が消えた大念は久しぶりに登校し、夕方になって寄り道をひながら帰宅していた。。
入信水のことはすっかり諦め、普通にオタクとして生活していけばそれで満足と考えるようになっていた。
そんな大念が一人で歩いている姿を、ある人物が目撃していた。
梓「あー、見るからにチョロそう。今日の獲物はあれで決まり♪」
江乃死魔幹部の一人、乾梓にターゲットにされてしまったのだ。
一度カツアゲの対象にされてしまったが最後、仮に逃げたとしても江乃死魔最速を誇る彼女から逃れる術はなかっただろう。
梓「ボコボコにされたくなかったら財布を出すんっすよ」
大念「ひい!?」
ケンカなんかしたことの無い大念は、女相手でも逆らうことが出来ず無様に財布を差し出してしまう。
梓「素直でよろしい

財布を奪い満足そうな梓だが、相手の顔を良く見ると違和感を感じる。
梓「……ん?」
梓(なんすかこの気持ち……凄い罪悪感あるんすけど……)
梓(なんだろう、とっちゃダメな気が……)
大念「も、もう行っていいですかっ」
梓「え?あぁ、まぁいいけど……名前は?」
大念「な、名前!?そ、それは……」
またカモにされることを恐れる大念が名前を言うのを渋るのも当然だった。
梓「言えっつってんだろーが!名前だよ名前!」
大念「すすすすいません!りゅ、龍咲大念です」
梓「龍咲大念……?」
それを聞いた梓は数秒固まってから驚愕の声を上げるする。
梓「ええええええ!?」
梓「あ、あなたが!?」
大念「え?あ、はい」
梓「ごめんなさいっ!」
大念「ちょ、ええ!?」
大念の名前を聞いた途端、乾梓は奪った財布を返し、深々と頭を下げて謝罪した。
急に何度も何度も頭を下げられ、大念もわけがわからない。
梓「本当にすいません!まさか教祖様だなんて思ってなくて!」
梓「う、うえええん!ゆ、許されないっすよね?死んで詫びます!」
大念「な、何で泣くの!?って、ていうか教祖様!?」
大念(え?もしかしてこの子があれを飲んで、し、信者になったっていうのか?)
梓の反応に戸惑うしかなかったが、この反応と彼女の口から出てきた『教祖様』というワード。
入信水を飲んだのでなければ説明できない状況だった。
大念「あの……か、確認なんだけど……」
梓「死ねばいいんすね!?もちろん今すぐにでも死ぬっす!どう死ねばいいですか!?」
大念「そうじゃなくて、その……き、君はええと……お、俺の信者……なの?」
梓「破門ってことっすか!?」
大念「違う違う、そうじゃなくて……とりあえず破門でもないし償うとかもいいから話聞いてくれる?」
梓「こんな大罪を犯した私を許してくれるんすか!?」
大念「ゆ、許す。許すから」
梓「……!」
許すと言われた梓は一瞬硬直し、そのすぐ後に体を震えさせて俯いた。
梓「きょ……」
大念「きょ?」
梓「教祖さまあああああ!!」
大念「うへ!?」
梓「うえええええんっ」
突然叫んだかと思うと、胸に飛び込んできて号泣する梓に大念もパニックだった。
大念「ちょっ!?い、いったい」
大念(なんだこの状況!?って言うか今このひとやっぱり教祖様って言ったよな!?)
大念(っていうか胸があたって……!ああもう何が何だか……!!)
必死に今の状況を理解しようとするが、巨乳のおっぱいの感触で理性が吹き飛びそうになる。
彼女が泣き止み落ち着いて話ができるまではかなり時間がかかった。
*辻堂さんの宗教ロード*
Religion1「カツアゲ相手は教祖さま!?」
彼女の名前は乾梓。
陸上の名門由井浜の生徒で、あの江乃死魔で幹部をやっているガチガチの不良。
数日前から龍咲大念の信者……つまり俺の信者になったという認識らしく、とにかくめちゃめちゃ信仰心が強いらしい。
大念「初めて会ったわけだけど、俺の信者になんてなんでなったの……?」
梓「なんか突然ビビッときたんすよ。龍咲大念様の教えの元に生きていくんだーって頭が埋め尽くされて」
大念「さ、様……ち、ちなみに俺のこと見てどう思う?」
梓「う~ん、教祖様は見た目は絶妙なラインでキモいっすけど、それはそれで味があっていい感じじゃないっすかね。なんていっても神っすから」
信者と簡単に言うが、なにかルールはあるのかと聞くと、特にないらしい。
その理由も大念がルールを決めていないかららしく、信者は教祖の言う事を信じその通りにするだけなのだという。
大念「じゃあ例えば、その……俺に絶対服従するのが信者の決まりって言ったら従うの?」
梓「もちろんっす!っていうかそれは言われなくても既にそうっすよ?」
大念「で、でもさ。例えば俺が死ねとか言っても死ねないでしょ?」
梓「え?死ねますけど」
大念「はい?いやいやそれはさすがに嘘でしょ」
あまりに簡単に梓が答えるので、これは冗談かと思ったがどうやらそうではないらしい。
梓「大マジっすよ。教祖様が死ねと命じるんなら、自分の命なんていつでも捨てれるっす」
梓「あずはガチの信者なんでトーゼンですよ」
大念(ほんとかよ……)
もうちょっと思いつめた感じで言われたのならともかく、ここまでポップに言われてすぐに信じられるほど大念も単純ではない。
しかし本心かどうか確かめようにもその方法も思い浮かばない。
いや思い浮かんではいるのだが、それを言うのは気が引けた。
大念「ま、まぁそれは極端だけどさ……その、証拠がないじゃない」
梓「なんでも言う事を聞くって証明すればいいってことっすね!だったらなんでも言ってください」
大念「な、なんでも……?」
梓「はい!なんでも♪」
大念「へ、へんなこと言っても怒らない……?」
梓「やだなー、あずが怒るわけないじゃないっすかー」
ここまで念を押したので、大念は緊張しながらも自分の考えを言ってみることにした。
大念「え~とその、例えばじゃあ……お、俺とエッチなこと……なんて……で、できないよね?」
梓「もちろんいいっすよ」
大念「ま、マジ?」
梓「マジもマジっすよ。教祖様のお誘いを信者の自分が断るわけないじゃないっすか」
大念(ま、マジかよ……)
初対面の男にヤらせろと言われて、笑顔でOKする。そんなこと普通じゃありえない。
嘘をついているようには見えなかったし、これだけ見た目の整った女の子と初体験できるかもしれない。
そう思ったら大念は頭がヤることでいっぱいになってしまった。
梓「ここから少し歩いたところにラブホあるっすから、そこ行きましょ

大念「う、うん……!」
つづく
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