君の記憶 僕だけが知ってる♯1
オリジナルSS - 2014年06月14日 (土)
男は記憶を全て奪い去る。
手にしたデバイスは名前を入れた者の記憶を全て引き出し、メモリーに保存する。
記憶は人間を作る唯一無二の情報 記憶を奪われた人間には何も残らない
友達や家族の名前も、辛かったこと楽しかったこと
思い出やこれまで築いてきた全てのことを忘れた。
自分が何者なのか、自分は何をしていたのか
消え去った記憶が戻ることはない
人の親は我が子が誰かもわからない
子供がいたかもわからない
人の子は自分の親すらわからない
誰が自分を守ってくれるのか 育ててくれるのか
妻は?夫は?兄弟はいるのか
家も、財産も記憶が無ければ意味がない
覚えているのは名前と生きるための最低限の知識、そして言葉だけ
常識もモラルも、善と悪も忘れた
何が正しくて、何が正解なのかもわからない
空っぽになった人間に男はデバイスを使って1つだけインプットした。
『お前が何者で、どんな人間だったかを知るには男に聞くより他にない』
すると人間は男に求めた。自分が何者で、どんな人間だったかを。
そうして男に言われた言葉をそのまま信じた。それだけが自分を知る唯一の方法だったから。
だが男は―――――
嘘を教えた
真実とはかけはれたデタラメを 自分の望むままに
偽りも空っぽの人間にとっては真実だった。
お前は5歳の幼 児だと言われれば30歳でもそれを信じた。自分は5歳児なのだと。
君は小汚いホームレスだと言われれば、明らかに身なりの整った人間もそれを信じた。自分は小汚いホームレスだと。
清廉潔白な聖職者だった人間も、異常な性犯罪者だと言われればそれを信じた。
偽りが真実になった人間はその通りに行動した。
30歳の女性も5歳児のごとく振る舞い、精神は幼 児化した。
裕福だった女は街を徘徊し、ダンボールと新聞紙に身を包み生活する浮浪者になった。
神に仕える牧師は祈りに来た女を犯し、時には殺した。
悪戯に真実を与えては破滅させ遊んだ。
10人、20人とそれが続くとデバイスを使う男の考えにも変化が現れた。
デバイスは使えば使うほど機能が増えていったからだ。
引き出す記憶は一度に全てという制約も、20人に達する頃にはかなり細かく一部だけを抜き取れるようになった。
1人に1回しかできなかったインプットも10回以上インプットできるようになっていた。
5m先の人間までしか効果を発揮しなかった範囲も、半径100mまで使えるようになった。
対象の名前を自分で手に入れ入力する そういう手間もカメラで顔を撮影すれば名前が自動的に判明するようになった。
30人に達する頃にはさらにデバイスの機能は改善された。
その頃には男も経験を積み、デバイスの機能を熟知し、人間を自在に操れるようになっていた。
男は確信した。
これを使えば世界征服だって可能だと。
だが思った。
まずハーレムを作るのが先だと――
♯1 大金と痛み
2020年3月9日 東京都清瀬市
東京都でも郊外に位置するベッドタウン、清瀬市にその男はいた。
男の名前はタカシ。26歳のフリーターだった。
地方から声優を目指し上京してきたものの、才能もなく大した努力もしない彼はすぐに挫折しそのままフリーターとして数年を過ごしていた。
1Rの所謂ボロアパートに住むタカシは自宅に送られてきた差出人不明の箱を開けたことで人生が変わった。
デバイスは人の記憶を吸い取り、新しい記憶をインプットすることができるものだった。
デバイスを使い始めて3ヶ月。
その機能を自在に使いこなせるようになったタカシは世界征服、それに先立ってハーレムを作ることを計画した。
そして今日、遂に世界征服に向けて行動を開始したのだ。
清瀬駅前 コンビニ『コーソン』
タカシはバイト先に来ていた。
最期のシフトが終わると店長に挨拶に行った。
「今までお世話になりました」
「お疲れ様。ウチに入ってどれくらいだっけ?」
「ちょうど1年くらいです」
店長は人柄のよい50歳の男性だった。
タカシが1年もバイトを続けられたのは失敗をきつく叱らない店長の優しさが大きな理由だった。
「――――では僕はこれで失礼します」
「ちょっと待ちなさい」
「はい?」
「君がウチに来てくれてよかった。本当に感謝しているよ。これは退職金には少ないかもしれないが、受け取ってほしい」
そう言って店長が差し出したのは小さなアタッシュケースだった。
開けてみると中には大量の現金が入っていた。
「これは……」
「2000万円ある。私の貯金の全てだ」
「いいんですか、こんな大金」
「あぁ是非受け取ってくれ。実はずっとこのお金はキミに渡したいと思っていたんだ。1年前からずっとね」
「そうですか。では遠慮なく受け取ります。今までありがとうございました」
タカシは迷いなくアタッシュケースを受けとり、そのまま帰宅した。
「2000万……ハハハ!簡単にこんな大金が手に入るなんて……最高すぎる!今まで何十年もコツコツ貯めてきた金を簡単に差し出すなんてな。記憶の書き換えは完璧、大成功だ!ハハハ!」
タカシは前日にバイト先に行き、店長の記憶の一部を吸出し、新しい記憶をインプットしていた。
老後の為に貯めていた大切なお金という記憶を吸出し、誰かにあげるために貯めていた泡銭でタカシがバイトに入ったときから辞める時に貯金を全てあげようと思っていた。そう記憶を改竄していたのだ。
他の記憶を変えてはいないので店長が違和感を覚え、実際にお金を譲ろうとしなかった可能性も充分にあった。
だが、30年分の記憶を書き換えたことで違和感より改竄された記憶が勝った。それほど人間にとって記憶とは行動に影響や心理に影響を与えるものなのだ。
だから当日店長はいたって普通にお金を差し出したのだ。
ともあれタカシの手元には2000万という大金が労せずして入り込むこととなった。
デバイスを駆使すればいくらでも大金が手に入る。
それを確信したタカシはその日のうちに次の行動に移った。
身なりを整え池袋のキャバクラに行き、豪遊したのだ。
それなりに高級店で有名人も良く訪れるという店で湯水の様に金を使い、女を代わる代わる指名し両脇にはべらせた。
そして流れの中でデバイスを使いツーショットの写真をたくさん撮った。
タカシに着いたキャバ嬢が10人を超えたところで閉店時間が近付き、最後に№1の女を指名し、金に物を言わせてホテルへと持ち帰った。
わずか3時間で会計は800万を超えていた。
ホテルでは№1の女を激しく抱いた。
女はお金の為に嫌々ながらも演技で楽しそうにセックスに応じた。
事が終わると女はシャワーを浴びに浴室へと入った。
そのタイミングを狙い、タカシはデバイスで女の名前を検索した。
この時の為にキャバクラで写真を撮っていたのだ。
「ナンバーワンの愛奈ちゃんの本名は……でたでた」
「北村由紀……ね。普通の名前だな。まぁいい、さっそく記憶を吸いだすとするか。」
表示された名前をタップすると抜き出す記憶を指定し、デバイスに記憶を吸いだした。
吸いだしたのは今日の朝からキャバクラを出てホテルに向かうまでにあったことの記憶だった。
そして変わりに新しい記憶をインプットした。
『今日何があったかを教えてもらうためにタカシと寝た。なぜなら本当のことを知っているのはタカシだけ。これからそれを教えてもらうつもりだった。』
シャワーを浴び終えた北村由紀は改竄された記憶の通り、タカシに今日何があったのかを聞いた。
タカシは丁寧に説明を始めた。
「僕だけが知ってる君の記憶を教えてあげる」
僕が作った 嘘の記憶を――
――――
「ふぅん……なるほど。そんなことがあったんだ……。」
「ふふっ、そうだよ。それが今日間違いなく君に起きた出来事だよ。」
「話をまとめると、今日の朝私はオナニーで10回もイッてふらふらの状態で出勤した。そのせいで気が緩んでた私はお店でオナラをしちゃって、あまりの恥ずかしさで記憶喪失になってしまった。」
「そうそう。」
「で、たまたま私の記憶を知るタカシくんがお店に来たから私が無理を言ってホテルに連れてきたんだね。」
「そうだね。条件も言った通りだよ。」
「うん。今日のことを教えてもらうお礼にエッチするのと、私の貯金全部タカシくんにあげるって約束なんだよね」
「うんうん!エッチはもうしたから、後は貯金を貰うだけだね。」
記憶の改竄が上手くいっていることを確信したタカシは改めて由紀にお金を求めた。
彼女の貯金をどれだけ持っているのかが楽しみで仕方がなかった。
高級キャバクラの、それもナンバーワンともなれば店長の2000万など遥かに上回る貯金があると思ったからだ。
だが、タカシの予想は裏切られてしまう。
由紀が差し出した通帳には預金が20万円しか入っていなかったのだ。
「えっ、これで全部?」
「うん。私すぐお金使っちゃうから全然貯まらないんだよねー。」
「おいおい!これじゃあ赤字じゃん!店で800万も払ったのに20万って……赤字じゃんか!!ふざけんなよっ」
目論見が外れたタカシは動揺して由紀の肩を揺さぶり問い詰めたが、部分的な記憶の改竄が仇になり反撃を許してしまう。
「ちょっ!約束は守ったでしょ!?」
「そうだけどさぁ!」
「ッ!ちょっと離してよ!ふざけんなっ」
振りほどこうと抵抗した由紀の肘が顔面にぶつかり、タカシはその場に悶絶した。
そして由紀は急いで服を纏うと、ホテルから去ってしまった。
「くっそ……!あのクソ女ぁ……!」
今晩タカシに残ったのは由紀の通帳と顔面の痛みだった。
セックスの後で疲れていたこともあり、その夜はそのまま眠りにつくことにした。
今日の失敗を二度と繰り返さないと誓って――
所持金:1140万
自宅 :清瀬市 安井荘1R風呂トイレ共同
支配した人間:0人
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