ポケマン・マイスター 1章
ポケットモンスターシリーズ - 2021年06月16日 (水)
トアル地方の孤島「スター島」

その島に来るよう手紙で祖父に呼び出された青年セイジ、同封されていた切符とお金を使い船でやってきた。
彼はニートであり、祖父であるタンゾウ博士からの仕送りで生活していたが、どうやらそれもままならなくなりそうだということで、焦ってやって来たのだ。
幸い、手紙には一生楽しんでくらせる素晴らしい道具を授けると書いてあったので、それほど不安は無かった。

屋敷の玄関は指紋と正門認証で、セイジも過去にきた経験から鍵が無くても入れることを知っていた。
「じいちゃん、お邪魔するよ」
屋敷に入ると、ご丁寧に廊下にテープで矢印が作られていて、その通りに進んだ。
階段を下りて地下室に誘導されたセイジは、なんとなく祖父タンゾウはもうここにいないということを察していた。

「ここはじいちゃんの研究室か……懐かしいな」
「勝手に弄って、滅茶苦茶キレられたっけ」
床のテープは研究室の中央にあるテーブルを最後に切れていて、そこに目をやると一台のパソコンが置いてあった。

「来たかセイジ」
「うわ!?」
パソコンの前に立った瞬間、画面から声をかけられて思わず尻もちをつきそうになる。
モニターがセンサーで自動起動するようになっていたようで、画面に映っていたのはタンゾウ博士だった。
「久しぶりじゃなセイジ。と言っても、今ワシの目の前にあるのはカメラじゃが」
「ゴホン!それはそうと、録画だから単刀直入に言うが……セイジ、お前は今からポケモントレーナーのトレーナーになるのじゃ!」
「そしてワシの代わりに、夢のハーレムを築くのじゃ!いいな!」
「は、はああ!?」
「わかっておる。どうせこれを聞いて驚いておるのじゃろ」
「じゃが納得せい!というか受け答えできんから納得してもらわんと困る」
「……と、言うわけで話を続けるぞ」
タンゾウが言うように録画映像と会話できるわけがないので、セイジはあっけにとられながらも話を聞くしかなかった。

「まず、ワシは女ポケモントレーナーをポケマンと呼んでおる。本当は違うが、とりあえずポケモントレーナーウーマンの略だと思っておいてくれい」
「……マジかよ。発想が相変わらず変態なんだよな」
「セイジよ。お前はポケモンマスターならぬ、ポケマンマイスターを目指すのじゃ!」
「ぽ、ポケマンマス…マイスター?」
マイスターってなんだっけ?とセイジは思ったが、話は続いた。
ちなみにここでのマイスターとは主人・名人の2つの意味を含めたものであり、女ポケモントレーナーを操り支配する主人であり名人になれということだった。
今はちゃんと理解していないセイジだが、近い将来そうなることは間違いない。
その自信がタンゾウにはあったのだ。
なぜなら、セイジには確実の自分の血が流れているのだから。
「ワシの血を引き、若さもあるお前になら必ずできる!」
「と言っても、何も無しではそれも叶わんからの。その為の手助けとなる三つの道具を与える!」
「モニターの脇に箱があるじゃろう?それを開けて中身を出すのだ」
「ちなみに20秒以内に取り出さないとワシは次の話に進むから急げ」
セイジは慌てて箱を開け、中に入っていた三つの物を取り出した。
「お前に授けるのは三つの道具じゃ。全部ワシの発明だから世界に一つだけのものばかり」

「一つは、どんな人間の情報も表示することのできるポケマン図鑑」
「半径30m以内にいる人間であれば、基本的な情報は全て表示できる優れモノじゃ」
「どういう理屈でだよ!?」
「ちなみに一度でも図鑑で見た人間の情報は離れていても確認できる。お前がゲットしたポケマンの情報は特に詳細なデータが出るから見てみるとええ」

「二つ目は、どんな人間でも捕獲してしまうことのできるアブソリュートマイスターボールじゃ」
「略してアマボールと呼んでおる」
「普通に投げてぶつけるのはモンスターボールと一緒じゃが、外れても自動追尾する優れものじゃからまず捕らえられるじゃろう」
「自動追尾の有効射程距離は約3mじゃが、射程は捕らえた数に合わせて伸びていく仕組みで、一人捕まえるごとに5m伸びる。こういう成長要素も楽しいじゃろ?」
そこは最初から最大性能にしとけよとセイジは思ったが、話は続いた。
「捕らえたポケマンは自動的に服従化処理が施され、お前の命令には絶対服従するようになる」
「お、俺の命令に絶対服従……!」
急に胸が熱くなるワードが出てきて、セイジの心臓は鼓動が聞こえるほどバクバクと高鳴りはじめた。
「ちなみにアマボールはお前以外にも使用できるが、誰が使っても効果は一緒じゃ」
「つまり、他人がアマボールで誰かを捕まえたとしても、セイジに絶対服従するようになる」
「じゃから盗まれても安心してええ」

「最後の三つ目は、アマボールをセットすることでポケマンを洗脳支配することができる装置」
「名付けて、ポケマンカスタマイザーじゃ」
「せ、洗脳支配……!」
「先に言ったようにアマボール自体には命令を強制的にきかせる服従化が備わっておるが、心までは変えることはできんのじゃ」
「そこで、この装置を使い自分の意のままに心を書き換えれば、どんなポケマンだろうがお前好みになるじゃろう」
「ちなみにポケマンカスタマイザーにも隠し機能があるが、それはお前の成長後に開放されるから楽しみにな!」
ゴクリと、生唾を飲む。
女を服従させ、洗脳して自分好みに帰られる。
そんなAVみたいなことが現実に出来るのかと思うと、胸の鼓動がとめどなく高まっていった。
「これらを駆使して、お前は全国各地を飛び回り、ポケマンを捕まえてハーレムを作り上げるのじゃ!」
「アマボールはとりあえず地下倉庫に20個用意しておいた」
「足りなくなったら同じく地下にある自動製造装置が勝手に作ってくれるから安心せい」
「材料も地中から自動採取しておるから、無限に作れる」
「ワシがこのスター島に拠点を置いたのも、アマボールの材料が全て取れるからなんじゃ」
「……と、話がそれたの」
「説明は以上じゃが、ワシはお前がこの映像を見るころには恐らくもうこの世におらん」
「持病と寿命のダブルパンチじゃからな」
「この屋敷はお前に譲るから、拠点とするといい」
「ワシはこの映像の撮影後、手紙をお前に出し、ここへ呼び寄せる」
「お前が到着するのには少なくとも5日はかかるじゃろう」
「そのあいだ、ワシは最後の命を振り絞ってどこかの地方へ行き、残った金を使いきるまで女を買い漁るつもりじゃ」
「じいちゃん……」
普通こういう時は最後に一目会いたかったとか、感動的なメッセージにするものじゃないのか。
そう思ったが、この非常識な血が自分にも流れているのだと思うと、一方的に呆れることもできなかった。
「まずはこの島からフェリーで行ける、カントー地方へ行け!」
「あとはお前の股間の導くままに突き進めばよい」
「それじゃあな!我が孫よ、頑張れい!」
「以上、映像終わり!」
「えっ!?」
唐突な終了に祖父との別れを惜しむ間もなかったが、セイジの頭は既にアマボールのことで一杯だった。
そしてそれはタンゾウの臨んだことでもあった。
「しっかし……まずはカントーに行けっつってもな……」
まずアマボールで本当に人間をゲットできるのか試してみないことには不安で船旅などできない。
ただどのみち屋敷周辺に人はいないので、切符を買うついでにフェリー乗り場に行くことにした。
「切符売り場あたりで良さそうな人がいたら使ってみるか」

セイジがフェリー乗り場に行くと、ちょうどフェリーが到着したところだった。
数人の乗客が降りてくるのを遠目で眺めていると、ポケモントレーナーらしき格好をした女が降りてきた。

「ここがスター島ね。めずらしいポケモンいるといいな」
男性の中に一人だけで混じっていた彼女は遠目でも可愛いとわかる容姿で、気付かれないように近寄って物陰から様子を伺ってみることに。

「か、可愛い……!」
近くで見ると、思わず心の声が漏れるほどに可愛い女の子だった。
アマボールを使うならこの子しかないとセイジは直感し、ポケットに手を伸ばす。
(ま、待てよ。ここで使うと誰かに見つかるかも……)
射程は3m。
相当近付かなければいけない為、人目につかないようにするには一人になったところを狙うしかないわけだが、チャンスはすぐにやってきた。
フェリー乗り場の昇降桟橋から接続されている建物の中で、公衆トイレに入っていったのだ。
(これはチャンス来たんじゃないか!?)
降りてきた客はその女以外は男だけ。
しかも、降りる時は手続きがないこともあって男の客は建物から既に出ていてトイレを使いに来ることもなさそうだ。
トイレの場所もロビーから廊下を少し進んだところにあるため、周囲に人目はない。
そこで女子トイレの入り口近くで立って待ち伏せることに。
トイレ前の廊下でボールを握りしめ待つセイジは、まさに手に汗握っていた。
(……ヤバイ、滅茶苦茶緊張する)
本当に人間を捕獲できるのか。
そもそも投げてちゃんと当たるのか。
不安で緊張しつつ、それでも成功した時のことが頭をよぎり同じくらい興奮する。

するとすぐに女が出てきた。
(は、早っ!?)
不意をつかれ咄嗟にボールを投げるのではなく強く握ってしまったその時、
さらに悪いことに話しかけられてしまう。
「あれ?それモンスターボールですか?」
「もしかしてポケモンバトルですか?」
「あ、いやこれはそのっ」
「バトルじゃないんですか?……変わったボールですね。この島のご当地ボールかな」
「えと!そのあのっ……あっ!?」
慌てて取り繕うとした時、うっかりボールが手から離れてしまう。
手を離れたボールに慌てて手を伸ばすが、地面に到達する直前、ボールは落下を止める。
アマボールの機能である自動追尾機能が働き、目の前の女に吸い寄せられるように移動して接触したのだ。
そして次の瞬間……

「きゃあああ!!」

ボールがパカッと開き発光したと思った矢先、女が吸い込まれたのだ。
それはまるでポケモンを捕まえる時のモンスターボールに瓜二つだった。

彼女を吸い込んだボールはボトッと地面に落ちると、左右に何度か揺れ、少ししてから動きが止まった。
「げ、ゲットした……のか?」
ボールを取ろうと手を伸ばした時、ピロロロリーンと音が鳴る。
「この音……あ!図鑑か!?」
ポケモン同様に、ゲットしたことで情報を読み上げる機能が働いたのではと、ポケマン図鑑を開く。

「おぉ……!」
するとやはり図鑑が表示されていて、今ゲットした女の子の情報が読み上げられた。

「す、すげぇ……」
プライベートなことまで載せられた図鑑内容を見て、驚きと興奮が同時にやってくる。
目の前に落ちておるボールも含め、女を捕まえたんだという実感が湧く。
「ディ……Dカップか」
「セックス経験なしって……しょ、処女ってことだよな……!」
食い入るように情報を見ていると、図鑑に『さらに詳しく』というボタンがあることに気付く。
試しに押してみると、表示が変わった。

「裸っ!?」
「ま、マジかよこれ!」
なんと全裸が表示され、しかもオナニーを始めとする性行為の回数まで表示されていたのだ。
「ややや、やべぇ……超すげーじゃんこの図鑑!」
改めてポケマン図鑑とアマボールの凄さを知ったセイジは、このときが恐らく初めてであろう本当の意味で尊敬の念を祖父タンゾウに対して抱くのだった。
「メイっていうのか……図鑑にも書いてあるし、本当に俺の命令を聞くんだよな……」
「ってことは……!」
セイジは生唾を飲み込み、ボールを拾ってポケットに入れ、とにかくその場を去るのだった。
つづく

その島に来るよう手紙で祖父に呼び出された青年セイジ、同封されていた切符とお金を使い船でやってきた。
彼はニートであり、祖父であるタンゾウ博士からの仕送りで生活していたが、どうやらそれもままならなくなりそうだということで、焦ってやって来たのだ。
幸い、手紙には一生楽しんでくらせる素晴らしい道具を授けると書いてあったので、それほど不安は無かった。

屋敷の玄関は指紋と正門認証で、セイジも過去にきた経験から鍵が無くても入れることを知っていた。
「じいちゃん、お邪魔するよ」
屋敷に入ると、ご丁寧に廊下にテープで矢印が作られていて、その通りに進んだ。
階段を下りて地下室に誘導されたセイジは、なんとなく祖父タンゾウはもうここにいないということを察していた。

「ここはじいちゃんの研究室か……懐かしいな」
「勝手に弄って、滅茶苦茶キレられたっけ」
床のテープは研究室の中央にあるテーブルを最後に切れていて、そこに目をやると一台のパソコンが置いてあった。

「来たかセイジ」
「うわ!?」
パソコンの前に立った瞬間、画面から声をかけられて思わず尻もちをつきそうになる。
モニターがセンサーで自動起動するようになっていたようで、画面に映っていたのはタンゾウ博士だった。
「久しぶりじゃなセイジ。と言っても、今ワシの目の前にあるのはカメラじゃが」
「ゴホン!それはそうと、録画だから単刀直入に言うが……セイジ、お前は今からポケモントレーナーのトレーナーになるのじゃ!」
「そしてワシの代わりに、夢のハーレムを築くのじゃ!いいな!」
「は、はああ!?」
「わかっておる。どうせこれを聞いて驚いておるのじゃろ」
「じゃが納得せい!というか受け答えできんから納得してもらわんと困る」
「……と、言うわけで話を続けるぞ」
タンゾウが言うように録画映像と会話できるわけがないので、セイジはあっけにとられながらも話を聞くしかなかった。

「まず、ワシは女ポケモントレーナーをポケマンと呼んでおる。本当は違うが、とりあえずポケモントレーナーウーマンの略だと思っておいてくれい」
「……マジかよ。発想が相変わらず変態なんだよな」
「セイジよ。お前はポケモンマスターならぬ、ポケマンマイスターを目指すのじゃ!」
「ぽ、ポケマンマス…マイスター?」
マイスターってなんだっけ?とセイジは思ったが、話は続いた。
ちなみにここでのマイスターとは主人・名人の2つの意味を含めたものであり、女ポケモントレーナーを操り支配する主人であり名人になれということだった。
今はちゃんと理解していないセイジだが、近い将来そうなることは間違いない。
その自信がタンゾウにはあったのだ。
なぜなら、セイジには確実の自分の血が流れているのだから。
「ワシの血を引き、若さもあるお前になら必ずできる!」
「と言っても、何も無しではそれも叶わんからの。その為の手助けとなる三つの道具を与える!」
「モニターの脇に箱があるじゃろう?それを開けて中身を出すのだ」
「ちなみに20秒以内に取り出さないとワシは次の話に進むから急げ」
セイジは慌てて箱を開け、中に入っていた三つの物を取り出した。
「お前に授けるのは三つの道具じゃ。全部ワシの発明だから世界に一つだけのものばかり」

「一つは、どんな人間の情報も表示することのできるポケマン図鑑」
「半径30m以内にいる人間であれば、基本的な情報は全て表示できる優れモノじゃ」
「どういう理屈でだよ!?」
「ちなみに一度でも図鑑で見た人間の情報は離れていても確認できる。お前がゲットしたポケマンの情報は特に詳細なデータが出るから見てみるとええ」

「二つ目は、どんな人間でも捕獲してしまうことのできるアブソリュートマイスターボールじゃ」
「略してアマボールと呼んでおる」
「普通に投げてぶつけるのはモンスターボールと一緒じゃが、外れても自動追尾する優れものじゃからまず捕らえられるじゃろう」
「自動追尾の有効射程距離は約3mじゃが、射程は捕らえた数に合わせて伸びていく仕組みで、一人捕まえるごとに5m伸びる。こういう成長要素も楽しいじゃろ?」
そこは最初から最大性能にしとけよとセイジは思ったが、話は続いた。
「捕らえたポケマンは自動的に服従化処理が施され、お前の命令には絶対服従するようになる」
「お、俺の命令に絶対服従……!」
急に胸が熱くなるワードが出てきて、セイジの心臓は鼓動が聞こえるほどバクバクと高鳴りはじめた。
「ちなみにアマボールはお前以外にも使用できるが、誰が使っても効果は一緒じゃ」
「つまり、他人がアマボールで誰かを捕まえたとしても、セイジに絶対服従するようになる」
「じゃから盗まれても安心してええ」

「最後の三つ目は、アマボールをセットすることでポケマンを洗脳支配することができる装置」
「名付けて、ポケマンカスタマイザーじゃ」
「せ、洗脳支配……!」
「先に言ったようにアマボール自体には命令を強制的にきかせる服従化が備わっておるが、心までは変えることはできんのじゃ」
「そこで、この装置を使い自分の意のままに心を書き換えれば、どんなポケマンだろうがお前好みになるじゃろう」
「ちなみにポケマンカスタマイザーにも隠し機能があるが、それはお前の成長後に開放されるから楽しみにな!」
ゴクリと、生唾を飲む。
女を服従させ、洗脳して自分好みに帰られる。
そんなAVみたいなことが現実に出来るのかと思うと、胸の鼓動がとめどなく高まっていった。
「これらを駆使して、お前は全国各地を飛び回り、ポケマンを捕まえてハーレムを作り上げるのじゃ!」
「アマボールはとりあえず地下倉庫に20個用意しておいた」
「足りなくなったら同じく地下にある自動製造装置が勝手に作ってくれるから安心せい」
「材料も地中から自動採取しておるから、無限に作れる」
「ワシがこのスター島に拠点を置いたのも、アマボールの材料が全て取れるからなんじゃ」
「……と、話がそれたの」
「説明は以上じゃが、ワシはお前がこの映像を見るころには恐らくもうこの世におらん」
「持病と寿命のダブルパンチじゃからな」
「この屋敷はお前に譲るから、拠点とするといい」
「ワシはこの映像の撮影後、手紙をお前に出し、ここへ呼び寄せる」
「お前が到着するのには少なくとも5日はかかるじゃろう」
「そのあいだ、ワシは最後の命を振り絞ってどこかの地方へ行き、残った金を使いきるまで女を買い漁るつもりじゃ」
「じいちゃん……」
普通こういう時は最後に一目会いたかったとか、感動的なメッセージにするものじゃないのか。
そう思ったが、この非常識な血が自分にも流れているのだと思うと、一方的に呆れることもできなかった。
「まずはこの島からフェリーで行ける、カントー地方へ行け!」
「あとはお前の股間の導くままに突き進めばよい」
「それじゃあな!我が孫よ、頑張れい!」
「以上、映像終わり!」
「えっ!?」
唐突な終了に祖父との別れを惜しむ間もなかったが、セイジの頭は既にアマボールのことで一杯だった。
そしてそれはタンゾウの臨んだことでもあった。
「しっかし……まずはカントーに行けっつってもな……」
まずアマボールで本当に人間をゲットできるのか試してみないことには不安で船旅などできない。
ただどのみち屋敷周辺に人はいないので、切符を買うついでにフェリー乗り場に行くことにした。
「切符売り場あたりで良さそうな人がいたら使ってみるか」

セイジがフェリー乗り場に行くと、ちょうどフェリーが到着したところだった。
数人の乗客が降りてくるのを遠目で眺めていると、ポケモントレーナーらしき格好をした女が降りてきた。

「ここがスター島ね。めずらしいポケモンいるといいな」
男性の中に一人だけで混じっていた彼女は遠目でも可愛いとわかる容姿で、気付かれないように近寄って物陰から様子を伺ってみることに。

「か、可愛い……!」
近くで見ると、思わず心の声が漏れるほどに可愛い女の子だった。
アマボールを使うならこの子しかないとセイジは直感し、ポケットに手を伸ばす。
(ま、待てよ。ここで使うと誰かに見つかるかも……)
射程は3m。
相当近付かなければいけない為、人目につかないようにするには一人になったところを狙うしかないわけだが、チャンスはすぐにやってきた。
フェリー乗り場の昇降桟橋から接続されている建物の中で、公衆トイレに入っていったのだ。
(これはチャンス来たんじゃないか!?)
降りてきた客はその女以外は男だけ。
しかも、降りる時は手続きがないこともあって男の客は建物から既に出ていてトイレを使いに来ることもなさそうだ。
トイレの場所もロビーから廊下を少し進んだところにあるため、周囲に人目はない。
そこで女子トイレの入り口近くで立って待ち伏せることに。
トイレ前の廊下でボールを握りしめ待つセイジは、まさに手に汗握っていた。
(……ヤバイ、滅茶苦茶緊張する)
本当に人間を捕獲できるのか。
そもそも投げてちゃんと当たるのか。
不安で緊張しつつ、それでも成功した時のことが頭をよぎり同じくらい興奮する。

するとすぐに女が出てきた。
(は、早っ!?)
不意をつかれ咄嗟にボールを投げるのではなく強く握ってしまったその時、
さらに悪いことに話しかけられてしまう。
「あれ?それモンスターボールですか?」
「もしかしてポケモンバトルですか?」
「あ、いやこれはそのっ」
「バトルじゃないんですか?……変わったボールですね。この島のご当地ボールかな」
「えと!そのあのっ……あっ!?」
慌てて取り繕うとした時、うっかりボールが手から離れてしまう。
手を離れたボールに慌てて手を伸ばすが、地面に到達する直前、ボールは落下を止める。
アマボールの機能である自動追尾機能が働き、目の前の女に吸い寄せられるように移動して接触したのだ。
そして次の瞬間……

「きゃあああ!!」

ボールがパカッと開き発光したと思った矢先、女が吸い込まれたのだ。
それはまるでポケモンを捕まえる時のモンスターボールに瓜二つだった。

彼女を吸い込んだボールはボトッと地面に落ちると、左右に何度か揺れ、少ししてから動きが止まった。
「げ、ゲットした……のか?」
ボールを取ろうと手を伸ばした時、ピロロロリーンと音が鳴る。
「この音……あ!図鑑か!?」
ポケモン同様に、ゲットしたことで情報を読み上げる機能が働いたのではと、ポケマン図鑑を開く。

「おぉ……!」
するとやはり図鑑が表示されていて、今ゲットした女の子の情報が読み上げられた。

「す、すげぇ……」
プライベートなことまで載せられた図鑑内容を見て、驚きと興奮が同時にやってくる。
目の前に落ちておるボールも含め、女を捕まえたんだという実感が湧く。
「ディ……Dカップか」
「セックス経験なしって……しょ、処女ってことだよな……!」
食い入るように情報を見ていると、図鑑に『さらに詳しく』というボタンがあることに気付く。
試しに押してみると、表示が変わった。

「裸っ!?」
「ま、マジかよこれ!」
なんと全裸が表示され、しかもオナニーを始めとする性行為の回数まで表示されていたのだ。
「ややや、やべぇ……超すげーじゃんこの図鑑!」
改めてポケマン図鑑とアマボールの凄さを知ったセイジは、このときが恐らく初めてであろう本当の意味で尊敬の念を祖父タンゾウに対して抱くのだった。
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