催眠、薙切えりな~評価の相違~
食戟のソーマ - 2021年04月26日 (月)
薙切えりな
神の舌を持つ天才の彼女は、最近周囲の評価に頭を悩ませていた。
というのも、彼女自身の自己評価と周囲からの評価にあまりにも乖離があったからだ。
その悩みは自分が評価されていないという不満ではなく、むしろ自分が評価され過ぎていると感じてるところに起因する不安が原因だった。
(神の舌だなんて言われても何も嬉しくない……)
(私が作った料理も、みんな誰もが美味しいと口を揃えて言う)
(けど、欲しい言葉はそれじゃないの……)
最初は些細なことだった。
褒められ、尊敬されることにプレッシャーなど感じたことはなかったし、今もそれはない。
けれど自分が褒められ、尊敬されるような立派な人間ではないといつしか思うようになったのだ。
思いは日々の生活でどんどん強くなっていった。
対等に接してくれる人はいても、誰一人として自分を軽んじていない。普通の人以上の扱いを必ずされる。
それが嫌で仕方なかった。
周囲の評価は常に上昇していく。
それと反比例するように自己評価はどんどん下がっていった。
気付けば、薙切えりなにとって自分がとてもちっぽけな存在になってしまっていた。
自分の価値を自分で見いだせなかった彼女の自己評価は落ちるところまで落ちていたが、それに気付く者はいなかった。
表面上のえりなは、今もなお神の舌を持つ天才料理人だったからだ。
そんなある日、一人の男と運命的な出会いを果たす。
それは廊下を緋沙子と一緒に歩ている時だった。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
よそ見をして歩ていた男子生徒と衝突し、二人とも尻もちをついてしまった。
脇で見ていた緋沙子は男の側が明らかに不注意だったと怒るが、
男は立ち上がると謝りもせず、まるで汚物でも見るかのような見下した視線を自分に向けたのだ。
「……ッ!」
ゾクリとした。
直感的に自分を見下ろすその男が、自分のことを『薙切えりな』ではなく、ただの人間かそれ以下くらいにしかみていない。
それがわかったのだ。
「えりな様!大丈夫ですかっ」
「え、えぇ大丈夫よ。ちょっと尻もちをついちゃっただけだから」
「良かった……!おい、貴様!えりな様に謝れ!」
普通この状況なら仮にえりなからぶつかったのだとしても男の方が謝るだろう。
しかしこの男が取った態度は、常識から考えてもあまりに失礼なものだった。
「チッ……なんで俺だけ謝らなくちゃいけないんだよ」
「なんだとっ!?えりな様は貴様と違って大事な体なんだぞ!」
「そんなもん知らねーよ。俺に取っちゃこいつのことなんて大事でも何でもねーよ」
「……!!」
この時、えりなの中で直感が確信に近いものへと変わった。
ぶつかられた時の態度で自分を周囲の考える「薙切えりな」と同じに思っていないこと。
そして彼の自分への評価は、自分自身が思う評価と一致するのではないかと。
「緋沙子、いいのよ」
「こちらこそ、ぶつかってしまって悪かったわ」
「……わかればいーんだよ」
怒る緋沙子を制止して、大人の対応でえりなはこの場を収めた。
そうしたのは器の大きさを見せるためでも、揉め事が面倒だったからでもない。
(やっと見つけた……!)
(私の探していた、待ち望んでいた人が……!)
えりなは彼の機嫌を損ねたくなかったのだ。
なぜなら、これからあるお願いをするのだから。
夜、えりなはある家を訪れていた。
昼間にぶつかった男子生徒の家だ。
そこを訪ねるなり、えりなは言った。それも土下座で。
「私のパートナー……いえ、御主人様になってくれませんか!?」
「私、本当は尊敬なんてされたくないの。ゴミのように、ぞんざいに扱われたいの!」
「この神の舌だって汚されたい。残飯処理に使われたいの」
「あなたならきっとそうしてもらえる……だからお願い!私の御主人様になって!」
このいきなりの頼みに、男は満面の笑みで一言、わかったと答えた。
それはまるで、えりながこうやって懇願しに来るのがわかっていかのようであった。
神の舌を持つ天才の彼女は、最近周囲の評価に頭を悩ませていた。
というのも、彼女自身の自己評価と周囲からの評価にあまりにも乖離があったからだ。
その悩みは自分が評価されていないという不満ではなく、むしろ自分が評価され過ぎていると感じてるところに起因する不安が原因だった。
(神の舌だなんて言われても何も嬉しくない……)
(私が作った料理も、みんな誰もが美味しいと口を揃えて言う)
(けど、欲しい言葉はそれじゃないの……)
最初は些細なことだった。
褒められ、尊敬されることにプレッシャーなど感じたことはなかったし、今もそれはない。
けれど自分が褒められ、尊敬されるような立派な人間ではないといつしか思うようになったのだ。
思いは日々の生活でどんどん強くなっていった。
対等に接してくれる人はいても、誰一人として自分を軽んじていない。普通の人以上の扱いを必ずされる。
それが嫌で仕方なかった。
周囲の評価は常に上昇していく。
それと反比例するように自己評価はどんどん下がっていった。
気付けば、薙切えりなにとって自分がとてもちっぽけな存在になってしまっていた。
自分の価値を自分で見いだせなかった彼女の自己評価は落ちるところまで落ちていたが、それに気付く者はいなかった。
表面上のえりなは、今もなお神の舌を持つ天才料理人だったからだ。
そんなある日、一人の男と運命的な出会いを果たす。
それは廊下を緋沙子と一緒に歩ている時だった。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
よそ見をして歩ていた男子生徒と衝突し、二人とも尻もちをついてしまった。
脇で見ていた緋沙子は男の側が明らかに不注意だったと怒るが、
男は立ち上がると謝りもせず、まるで汚物でも見るかのような見下した視線を自分に向けたのだ。
「……ッ!」
ゾクリとした。
直感的に自分を見下ろすその男が、自分のことを『薙切えりな』ではなく、ただの人間かそれ以下くらいにしかみていない。
それがわかったのだ。
「えりな様!大丈夫ですかっ」
「え、えぇ大丈夫よ。ちょっと尻もちをついちゃっただけだから」
「良かった……!おい、貴様!えりな様に謝れ!」
普通この状況なら仮にえりなからぶつかったのだとしても男の方が謝るだろう。
しかしこの男が取った態度は、常識から考えてもあまりに失礼なものだった。
「チッ……なんで俺だけ謝らなくちゃいけないんだよ」
「なんだとっ!?えりな様は貴様と違って大事な体なんだぞ!」
「そんなもん知らねーよ。俺に取っちゃこいつのことなんて大事でも何でもねーよ」
「……!!」
この時、えりなの中で直感が確信に近いものへと変わった。
ぶつかられた時の態度で自分を周囲の考える「薙切えりな」と同じに思っていないこと。
そして彼の自分への評価は、自分自身が思う評価と一致するのではないかと。
「緋沙子、いいのよ」
「こちらこそ、ぶつかってしまって悪かったわ」
「……わかればいーんだよ」
怒る緋沙子を制止して、大人の対応でえりなはこの場を収めた。
そうしたのは器の大きさを見せるためでも、揉め事が面倒だったからでもない。
(やっと見つけた……!)
(私の探していた、待ち望んでいた人が……!)
えりなは彼の機嫌を損ねたくなかったのだ。
なぜなら、これからあるお願いをするのだから。
夜、えりなはある家を訪れていた。
昼間にぶつかった男子生徒の家だ。
そこを訪ねるなり、えりなは言った。それも土下座で。
「私のパートナー……いえ、御主人様になってくれませんか!?」
「私、本当は尊敬なんてされたくないの。ゴミのように、ぞんざいに扱われたいの!」
「この神の舌だって汚されたい。残飯処理に使われたいの」
「あなたならきっとそうしてもらえる……だからお願い!私の御主人様になって!」
このいきなりの頼みに、男は満面の笑みで一言、わかったと答えた。
それはまるで、えりながこうやって懇願しに来るのがわかっていかのようであった。
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